2025年2月01日
「認知症」と聞くと、もの忘れが激しくなる病気という印象を持たれる方が多いかもしれません。実際に、高齢のご家族が最近よく物忘れをするようになったと感じると、「もしかして認知症では?」と心配になることがあるでしょう。
一方で、認知症は決して高齢者だけのものではありません。比較的若い世代でも発症することがあり、また、物忘れ以外の症状が目立つタイプもあります。そういった場合には「まさか認知症だとは思わなかった」と受診が遅れてしまうことも少なくありません。
認知症は、脳のどの部分にどのような異常が起きるかによっていくつかの種類に分かれます。種類によって現れる症状や進み方、対応の方法も違います。認知症を理解する第一歩として、それぞれの特徴を知っておくことはとても大切です。
日本で多く見られる認知症には、主に4つのタイプがあります。それぞれについてご紹介します。
アルツハイマー型認知症
最も多い認知症のタイプで、認知症全体の6〜7割ほどを占めるとされています。「最近のことをすぐに忘れてしまう」「同じことを何度も聞く」といった記憶の低下から始まり、少しずつ判断力や理解力も弱まっていきます。
原因としては、アミロイドβというたんぱく質が脳にたまり、神経細胞がゆっくり壊れていくことが関係しているといわれています。なぜたまるのかはまだ完全にはわかっていませんが、最近では帯状疱疹の予防接種が発症リスクを下げる可能性があるという報告もあり、脳の慢性的な炎症との関連も注目されています。
ゆっくり進行するため、本人があまり自覚しないまま症状が進んでしまうこともあります。ご家族が「何かおかしいな」と感じたら、早めに受診することが大切です。
レビー小体型認知症(DLB)
アルツハイマー型に次いで多いタイプで、全体の15〜20%ほどを占めるといわれています。レビー小体という異常なたんぱく質が脳の中にたまることで起こります。
このタイプの特徴は、見えないものが見える「幻視」がよく起こることです。たとえば、「小さな子どもがいる」「虫がいる」などと訴えることがあり、本人には本当にそう見えているため、否定すると混乱させてしまうことがあります。
また、日によって意識がはっきりしていたり、ぼんやりしていたりと波がある「認知のゆらぎ」や、体がこわばって動きづらくなる「パーキンソン症状」も見られます。薬に対する反応が強く出やすい傾向もあり、治療には専門的な判断が求められます。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血など、脳の血管に何らかのトラブルが起きたあとに発症する認知症です。脳のダメージを受けた場所によって現れる症状が異なり、手足のまひや言葉の障害などを伴うこともあります。
また、日によって調子がよいときと悪いときがあり、感情が不安定になったり、やる気がなくなったりすることもあります。
このタイプは、生活習慣病と深く関係しています。高血圧や糖尿病、コレステロール値の異常などをしっかり管理することで、発症や再発のリスクを減らすことができます。
前頭側頭葉変性症(FTLD)
比較的若い世代、40〜60代で発症することもある認知症です。もの忘れよりも、「性格が変わった」「常識が通じない」といった行動の変化が早くから目立つのが特徴です。
たとえば、突然怒りっぽくなったり、人前でのマナーを守れなくなったり、無意味に物を集めたりすることがあります。本人にはその自覚がなく、周囲の方が戸惑ったり、精神的な病気と間違われることもあります。
このタイプも、早期に専門医の診断を受けることが非常に重要です。
認知症の4つの主なタイプと特徴(一覧)

認知症かもれしれないと思ったら?
認知症は「年のせい」と片づけられてしまうこともありますが、早めに気づき、適切な支援を受けることで、本人もご家族も安心して日々を過ごすことができます。
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