2025年4月01日
血管性認知症とは?
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など、脳の血管に障害が起きたあとに発症する認知症です。日本ではアルツハイマー型認知症に次いで多くみられます。
脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の一部がダメージを受け、記憶力だけでなく注意力、判断力、感情のコントロールなど、さまざまな機能に影響が出るのが特徴です。
血管性認知症に見られる症状
このタイプの認知症では、脳のどこに障害が起きたかによって症状が異なります。アルツハイマー型とは異なり、記憶障害が目立たない場合も多く、「記憶以外の症状が先に出る認知症」として知られています。
以下のような変化が見られることがあります:
- 言葉が出てこない、話すときに詰まる
- 感情が不安定になり、涙もろくなったり怒りっぽくなる
- 意欲が低下し、ぼんやり過ごす時間が増える
また、「できることとできないことの差が大きい」ことも特徴の一つです。
症状の進行のしかた
アルツハイマー型認知症がゆっくりと少しずつ進むのに対し、血管性認知症は脳血管障害が起きたときに階段状に悪化する(段階的に進行する)ことが特徴です。
たとえば、ある日突然「できていたことができなくなる」といった急な変化がみられることがあります。一方で、細かい血管の流れが少しずつ悪くなるタイプでは、進行が緩やかでアルツハイマー型との見分けが難しい場合もあります。
検査について
血管性認知症では、頭部CTやMRIで脳内に梗塞や出血の痕跡が見られることが診断の手がかりになります。これは、画像で異常が映らないこともあるアルツハイマー型との違いです。
訪問診療でできること
血管性認知症の大きな特徴のひとつは、「予防できる可能性がある」認知症であるという点です。高血圧、糖尿病、コレステロール異常、不整脈など、生活習慣病のコントロールが進行予防につながります。
当院の訪問診療では、生活習慣や服薬状況をふまえた医学的サポートを自宅で行うことができます。
また、高齢の方は多くの薬を服用していることが多く、脳にダメージがある状態で多剤併用されていると、せん妄やふらつき、転倒、さらに認知機能の悪化にもつながりかねません。
私たちは、薬の必要性を見直し、優先度の高い治療にしぼる「処方の整理」も診療の大切な一部と考えています。
診断とケアの進め方
血管性認知症の診断には、これまでの病歴(脳梗塞の有無や持病)と、生活の中でどんな変化が起きているかを丁寧に確認することが重要です。
必要に応じて画像検査を受けていただくこともありますが、**当院ではまずご自宅で生活の様子を伺い、診断に必要な情報を整理したうえで、連携病院での検査をご案内することが可能です。**検査結果も、当院の医師がご自宅で丁寧にご説明いたします。
「もしかして?」と思ったら…
以下のような症状が続く場合は、血管性認知症の可能性があります。早期の気づきが、生活の安定や再発の予防につながります。
- 急にぼんやりする時間が増えた
- 昼夜逆転や夜間の徘徊がみられる
- 手足の動きがぎこちなくなった
- 以前はできていた家事や用事を忘れるようになった
- 感情のコントロールが難しくなった(すぐ怒る・泣く)
- 病気は治ったはずなのに元気が出ない
- 医師や看護師の話をすぐに忘れてしまう
ご家族・支援者の皆さまへ
血管性認知症では、認知機能の障害だけでなく、身体的な後遺症もあるため、介護の負担が重なりやすい傾向があります。
たとえば、
「認知症だと思っていたら、実は再発した脳梗塞だった」
「うつ状態と区別がつきにくい」
そんな場面では、医療者の判断がとても大きな助けになります。
当院では、精神科・認知症診療に熟練した医師がご自宅に訪問し、心と身体の両面からのサポートを提供しています。支援者の皆さまとも連携しながら、地域で支える医療の一員としてご家族の力になれたらと考えています。
ひとりで悩まず、まずはご相談ください
「年のせいかな」「よくあることかも」と思うような小さな変化でも、気づきの早さが、その後の生活を大きく左右することがあります。
ご本人の不安はもちろん、ご家族や支援者の方々の心配が少しでも軽くなるよう診療を行っています。
どうぞ、お気軽にご相談ください。