前頭側頭葉変性症(FTLD)とは?|東京都墨田区の訪問診療・在宅医療|こころとからだの訪問診療 まつもとクリニック

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前頭側頭葉変性症(FTLD)とは?

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2025年5月11日

前頭側頭葉変性症とは?

前頭側頭葉変性症(FTLD)は、認知症の中でも比較的若い世代に発症することが多いタイプで、50〜60代での発症が多いとされています。認知症全体に占める割合は多くはありませんが、若年性認知症の原因としてはアルツハイマー型に次いで多い疾患といわれています。

FTLDは、脳の「前頭葉」や「側頭葉」といった部位に障害が生じ、萎縮していくことにより発症する認知症の総称です。これらの部位は、感情や行動の制御、言語理解、社会的判断などに深く関わっているため、初期から「人柄の変化」や「行動の異常」が目立つのが特徴です。

具体的には、「前頭側頭型認知症(bvFTD)」「意味性認知症(SD)」「進行性非流暢性失語(PNFA)」などが含まれます。また、一部には遺伝性があり、ご家族に同様の疾患歴がある場合、発症リスクが高まるとされています。

どんな症状が出るの?

▷ 性格や行動の変化

発症初期から、これまでの性格とは異なる行動が現れることが多く、「人が変わった」とご家族が感じるような変化が見られます。

たとえば:

公共の場で突然大声を出す、急に立ち上がる

空気を読まず無神経な発言を繰り返す

同じ食事や行動に固執する(ルーティン化)

周囲への共感が乏しくなる、配慮がなくなる

こうした行動の多くはご本人に悪気がないことが多く、ご家族が強く注意したり制止したりすることによって混乱や怒りを引き起こすこともあります。

▷ 常同行動・反社会的行動

同じ行動や言葉を何度も繰り返す「常同行動」や、物を収集する、他人の所有物を無断で持ち帰るといった反社会的な行動がみられることもあります。

このような行動は万引きや器物損壊として警察に補導されてしまうケースもありますが、ご本人に罪悪感や自覚が乏しいために繰り返してしまうことが特徴です。

▷ 食習慣の変化・食行動の異常

FTLDのうち、行動障害型前頭側頭型認知症では、食事の好みが大きく変わるなどの食習慣の変化が生じる場合もあります。また、何でも口に入れようとする、食べ物でないものを食べようとする(異食)、口に何か入れていないと落ち着かない、などの口唇傾向と呼ばれる症状を認める場合もあります。

▷ 言語の障害

FTLDの一部では、言語に特化した障害が見られるタイプがあります。

意味性認知症(SD):言葉の意味が理解できなくなる

進行性非流暢性失語(PNFA):言葉が滑らかに出てこなくなる、文法的な会話が困難になる

語彙が減る、単語が出てこない、話す量が極端に少なくなるといった症状もあり、ご家族との会話が難しくなっていくケースもあります。

診断と治療について

FTLDは、初期症状が性格の変化や社会的行動の異常として現れるため、精神疾患や性格の問題と誤解されやすい認知症です。

「人が変わってしまった」「精神疾患になってしまったのでは?」と疑われることも多く、「警察に補導された」という形で医療機関に繋がるケースもあります。

診断には、症状の経過や行動の観察に加え、MRIなどの画像検査で前頭葉や側頭葉の萎縮を確認することも必要な場合があります。

訪問診療でできること

FTLDでは、ご本人に自覚が乏しく、通院を拒否されることも少なくありません。また、ご家族からも「何科に行けばいいのか分からない」といった声がよく聞かれます。

当院では、認知症診療に精通した医師がご自宅に訪問し、生活環境の中での言動や変化をもとに診断を進めます。必要に応じて連携病院での画像検査を提案し、ご希望があれば検査結果はご自宅で医師がご説明いたします。

病院受診の負担を最小限にしながら、適切な医療にアクセスできる体制を整えています。

薬の使い方とケアの工夫

FTLDには進行を止める薬は現時点で存在しませんが、不穏や興奮、不眠、強いこだわりなどの周辺症状に対しては、少量の薬が効果的に働く場合があります。

ただし、レビー小体型認知症と同様に、薬剤に過敏な方もおられるため、生活環境に応じた最小限の処方での対応が基本です。

また、FTLDはご家族の介護負担が非常に大きい認知症であるため、介護者の休息(レスパイト)や、ケアマネージャーとの支援計画づくりが重要です。

ご家族・支援者の皆さまへ

FTLDは、「認知症」という言葉のイメージとは大きく異なる行動の変化を引き起こすため、ご家族の戸惑いや精神的な負担がとても大きい病気です。

「ご本人に悪気がないと分かっていても、ついきつく言ってしまう」

「病院に連れて行きたいのに、ご本人が拒否する」

「ご家族だけではどうにもならず、生活が限界に近づいている」

このような時こそ、訪問診療と多職種連携の支援体制がご家族・支援者の大きな味方になります。

ひとりで抱え込まず、まずはご相談を

「なんとなく様子がおかしい」「今までと明らかに性格が違う」——

その“違和感”こそが、大切な気づきです。

当院では、ご本人はもちろん、ご家族、ケアマネージャー、訪問看護師、地域包括支援センターの皆さまと連携しながら、生活に寄り添う医療を実現する訪問診療を心がけています。

どうぞ、お気軽にご相談ください。

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